令和5年度税制改正大綱

本日、令和5年度税制改正大綱が発表されました。以下はその抄です。

【法人税】

  1. コインランドリー等を利用した節税の禁止

中小企業投資促進税制(30%特別償却)の対象資産からコインランドリーが除外され、中小企業等経営強化税制(100%特別償却等)の対象資産から、コインランドリー業と暗号資産マイニング業の用に供する資産が除外されます。

2.使い勝手の良かった株式交付

令和5年10月1日以後、株式交付後に株式交付親会社が同族会社(非同族の同族会社を除く。)に該当する場合は、時価譲渡となり損益が発生するようになります。

3.固定資産税(先端設備等導入計画の改編)

  現在の先端設備等導入計画が令和5年3月31日で終了となります。

新たな先端設備導入計画は固定資産税を3年間1/2とし、雇用者給与等支給額の要件を満たせば5年間等1/3となります。

4.外形標準課税の適用対象法人の見直し検討

外形標準課税の適用対象法人の見直しは「引き続き慎重に検討」という記述にとどまりました。

【所得税】

1.個人投資家のスタートアップ支援を促す税制措置【減税】

 株式売却益を元手に一定の条件を満たしたスタートアップに再投資する場合の譲渡益の課税を免除する措置で上限は20億円で超えた分は課税を繰り延べ可能。

 損失が生じた場合には他の株式譲渡益と損益通算でき、3年間の繰越控除可能となります。

2.NISA(少額投資非課税制度)の拡充【減税】

 制度そのものを恒久化とし、非課税保有期間を無期限としました。なお、現行の制度である積立型と一般型をR6年1月から一本化し、現行の積立型(年間40万円)に相当する『つみたて投資枠』とし、投資信託への投資120万円まで拡充。また、現行の一般型(年間120万円)を『成長投資枠』とし、株式投資を240万円まで拡充することにより年間投資上限額を360万円、生涯における投資上限額を1800万円(成長投資枠については1,200万円)とします。

3.年間所得額が1億円を超えると税負担が下がる『1億円の壁』問題の是正【増税】

令和7年分以後の所得税について以下が適用されます。

 合計所得金額から特別控除3.3億を差し引いて22.5%をかけた金額が通常の所得税を上回る場合に差額を納税する制度が創設されます。金融資産が多い超富裕層である30億円を超える所得を持つ200~300人程度が対象となる見込みです。

【消費税】

インボイス制度につき、以下の改正となります。

1.免税事業者がインボイス発行事業者になった場合は今後3年間の消費税の納税額を売上高の消費税額の20%とすることが出来ます。

2.基準期間の課税売上高が1億円以下の事業者が令和5年10月1日~令和11年9月30日に行った1万円未満の課税仕入れは帳簿の保存を条件に適格請求書は不要となります。

3.売上げに係る対価の返還等に係る税込価額が1万円未満である場合はその適格返還請求書は不要となります。

4.インボイスの登録申請書の提出期限が対象となる課税期間の初日の15日前までになりました。

インボイス登録の取消しの届出書の提出期限も同様に変更されます。

【資産税】

ついにやってきました相続税・贈与税の大改正です。

相続税の基礎控除が引き下げられたH27改正と同等のインパクトがあります。

ただ、内容としてはプラスの面もあり、いろいろな憶測もありましたが、胸をなでおろした人も多いのではないでしょうか?施行は令和6年1月1日以降の贈与からです。

1.H15に創設された相続時精算課税制度は、一度選択するとその後すべての贈与を相続税で再計算することになるため、実務家としてはなかなか勧めにくい側面がありました。今回の改正により、相続時精算課税制度を選択したあとも毎年110万円までは相続税の再計算対象外となるため、確かに使い勝手はよくなったように思います。

2.贈与の原則である暦年課税贈与は、逆に負担増の改正です。

今までは亡くなった日以前3年以内の贈与を相続税の計算に加算する、というものでしたが、これが7年以内になります。ただし、3年以内の贈与以外の贈与財産(4~7年前に贈与で取得したもの)は100万円が計算から控除されます。

3.その他

・教育資金、結婚子育て資金の一括贈与は若干の改正ともにそれぞれ3年・ 2年の延長となります。

・マンションの相続税評価について、今年の改正はありませんでしたが、「基本的考え方」では、市場価格との“乖離”があるとし、適正化を検討すると触れられています。相続対策としてのマンション投資は課税当局より監視が強まる一方でしょう。

【その他の改正】

1.防衛力強化にかかる財源確保

令和6年以降の適切な時期に、法人税(法人税額500万円以上に対して4  ~4.5%)、所得税(1%の付加税を課す。復興特別所得税を1%下げ課税期間を延長)、たばこ税により税源を確保。

2.電子帳簿保存の緩和

令和6年1月から要請される電子取引について以下とする。

・電磁的記録の出力書面を提示できる場合は、検索要件を不要とする。

・相当の理由があり、かつ電磁的記録の出力書面を提示できる場合は、保存要件に従わない保存も可能とする。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です