本日、令和4年度税制改正大綱が与党から発表になりました。

税制改正大綱の要旨を、税目別に記載します。

【法人税編】中小企業対象分のみです

1.所得拡大促進税制の拡充

給与が前年より増加した場合、控除率(注)が増加します。

(注)「前年より増加した給与額」に対する割合です。「増加した額×控除率」を法人税から控除できます。

(現状)控除率15%。給与が2.5%以上増加した場合又は教育訓練費が10%以上増加等は、控除率上乗せ10%。

(改正案)控除率15%。給与が2.5%以上増加した場合、控除率上乗せ15%。教育訓練費が10%以上増加した場合、控除率上乗せ10%。

G・M注:この控除率の拡大だけ見ると減税なのですが、実は、従来も今後も、上記の控除額は「その年の法人税額の20%限度とする(所謂、頭打ち)」という規定があり、通常の会社は給与増加額×15%>法人税額×20%ですので、実質的には何も減税になっていません。

2.少額資産(足場、ドローン、LED等)を使った節税の禁止

今まで、足場等を購入して全額経費にして、その後その資産を貸付して数年で回収する節税方法がありましたが、「貸付にした資産は、一括経費にできない」という改正が入りました。

3.その他:

令和4年1月1日から施行される「電子取引の保存制度」について、実質2年間は、「紙での保存」を容認する改正が入ります。

財産債務調書(税務署に保有財産を提出するもの)は、現在「所得2000万円超かつ財産3億円以上」の人が対象ですが、「(所得がなくても)財産10億円以上」の人も対象になります。

G・M注:寝たきりのお年寄り等も対象になるのでしょうか・・・。

【所得税】

1.改正の目玉は住宅ローン控除

今次税制改正により、住宅ローン控除は4年間の延長(令和7年12月31日まで)となりました。しかし、制度そのものは縮小と思われる方も多いかもしれません。

気になる改正ポイントは次の通りです。

① 控除率 1% ⇒ 0.7%

② 所得要件3,000万円以下 ⇒ 2,000万円以下

以前より住宅ローンの控除率が住宅ローンの利率よりも高く、支出以上の利益を生むことが指摘されていました。所得要件も引き下げられ、高所得者層は税制が使えなくなります。

一方、国を挙げて環境問題へ取り組もうと、省エネ住宅には上乗せの措置も盛り込まれています。縮小の印象ではありますが、必要十分な税制になったのではないでしょうか。

 なお、これらは令和4年1月1日以後に居住用に供した場合から適用され、現在すでに住宅ローン控除の適用を受けている人は対象となりません。

2.税制の見直しにあたって

 コロナ禍において世の中の仕組みが大きく動きつつあります。

 今年の税制改正大綱のコメントの中には「働き方に中立的な税制の構築」という言葉がありました。働き方の多様化、資産形成の多様化、税制もどんどん複雑化しています。それに加え、中小事業者への記帳水準の向上も触れられていました。しかし、日本で簿記の知識や自分の所得税の計算の仕方を知っている人が何%いるでしょうか。税制の改正と共にもっと抜本的な取り組みが必要だと感じております。

【相続税、贈与税、資産税】

今年(2022年)は大改正はありませんでしたが、

冒頭の税制改正大綱の基本的考え方に

『現行の相続時生還課税制度と暦年課税制度のあり方を見直すなど、格差の固定化防止等の観点も踏まえながら、資産移転時期の選択に中立的な税制の構築に向けて本格的な検討を進める』『贈与税の非課税措置は、(省略)普段の見直しを行っていく必要がある』と来年以降、改正あるぞとにおわせております・・・。

1)父母や祖父母などの贈与より、居住の用に供する住宅用の家屋の新築、取得又は増改築等の対価に充てるための金銭を取得した場合の贈与税を非課税とする措置が2年間延長となりますが、非課税の限度額が縮小(最大1500万円から最大1000万円に引き下げ)となります。

 中古住宅(既存住宅用家屋)を取得した場合にもこの規定は使えるのですが、これまでは、中古の場合は20年以内(対価建築物の場合には25年以内)か、耐震基準に適合する証明書があるものでないとダメでした。しかし、今回、適用対象となる中古住宅築年数要件を廃止し、新耐震基準に適合している住宅用家屋(登記簿上の建築日付が昭和57年1月1日以降の家屋については、新耐震基準に適合している住宅用家屋とみなす。)であることを加える措置がなされました。

 なお、受贈者(もらう人)の年齢要件は成人年齢の変更に合わせ18歳以上となります。

これは、令和4年1月1日以後贈与により取得する住宅取得等資金に係る贈与税について適します。

⇒年々、住宅の値段が高くなっているので、お手頃価格で取得できる中古住宅市場の活性化が望まれます。

2)非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予の特例制度について、特例承継計画の提出期限が令和6年3月31日まで1年延長となります。

3)地価が上がった固定資産税の税額を新型コロナを考慮し税額を据え置く軽減を商業地に限り、従来の措置と比較して税額上昇分を半分に抑える措置となりました。

4)死亡届などの情報の提供を受けたときは、市町村長は、その死亡した人が所有していた土地・家屋の固定資産課税台帳の登録事項等を税務署に通知しなければならないという改正が入りました。

⇒確実に相続税を申告させるという国のやる気が見えます・・・

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