取締役会設置の是非

平成18年の会社法施行前まではどんな株式会社も取締役会設置会社であったこと、を踏襲して取締役「設置会社」にしている会社が多くみうけられます。

その中、ここ半年で、立て続けに弊社のお客様4社が取締役会「非」設置会社に変更されました。いずれも関東圏にも多店舗展開する等、相応の売上があり、利益をキッチリ出されている会社さんです。

変更した理由は、取締役会設置会社は取締役3名以上が必要、監査役が必要等のため、会社の実情に合わない、会社の機動性が無くなる、ためです。

機関設計を実態に合わせることにより、経営がしやすくなります。

なお、将来、①上場を目指す、②VC含めファンド等からの外部調達を考える必要がある等になった場合には、取締役会設置会社に変更する等で対応すれば良いかと思います。

みなし解散が現実に・・・

また聞きで恐縮ですが、今年1月ごろに、「みなし解散法人の申告についてのお知らせ」が来た会社があるそうです。

添付ファイルの法務省のチラシにあるように、12年間(変更等の)登記がない株式会社は、強制的にみなし解散(法務局の職権によるみなし解散の登記)になってしまいます。

親しい司法書士に聞くと、該当する会社は、みなし解散になる旨の通知が来るので、それを放置するとこうなるとのことです。

そうなると、会社継続の意思がある場合は、「会社継続の登記」をして会社状態を元に戻すことになります。

その場合は、

  1. 事業年度開始日~みなし解散日
  2. みなし解散日の翌日~会社継続の株主総会決議日の前日
  3. 会社継続の株主総会決議日~事業年度終了日

の各確定申告書の提出が必要になります。

もちろん、役員の登記等をキッチリ行うことによりこうならないよう注意する必要がありますね。

実は、事業承継税制(特例納税猶予)を適用している場合に、「解散」は「認定の取消事由」になるので、重々気を付けましょう!と申し上げているのですが、こういう事例を伺うと、長期に亘って管理が必要な特例納税猶予の適用に当たっては十分な管理体制が必要ということを改めて実感しました。

株価評価の基本的考え方

経営者の方に、「株式を譲渡」した場合の「株価」について、よく質問されます。

これ、なかなか経営者の方に理解されにくいので、弊社では添付ファイルを持参しています。

(注)以下では、同族株主のことを親族と表記しています。

パターン1:親族間での譲渡

  ・原則的評価額になります。

パターン2:親族→同族会社(株式発行会社以外の会社)への譲渡

  ・株価は、パターン1と違い「特別な原則的評価額」になります。

パターン3:親族→株式発行会社への譲渡(所謂、自社株買い)

  ・売却した親族への株式譲渡益への課税は、「総合課税」となり通常は税額が増えます。

大阪中小企業投資育成㈱さんで、「令和3年度 税制改正」のセミナーを行いました。

これも少し前のことで恐縮です。2月19日(金)に大阪中小企業投資育成株式会社さんで、「令和3年度 税制改正」のセミナーを行いました。

投資育成さんの会議室でのセミナーでしたので、共同講師のプルデンシャル生命の坪原さんが用意してくださった「新型フェイスマスク」を着用して行いました。

参加者の方が興味を持ってくださったのは、以下の点です。

1.中小企業M&A税制 

 これは、5年後から益金算入する必要がありますが、初年度に一括で経費が計上できるのは、いわば中小企業等経営強化税制で即時償却するのと「実態は同じ」という説明をしました。

 これに、令和2年度の改正ですが、グループ通算制度(令和4年4月開始事業年度から適用開始)を併用すると法人税の負担の軽減が図れると思います。

2.固定資産税の特例

 先端設備等導入計画の認定が前提ですが、投資後3年間の固定資産税が軽減されるものです。昨年この対象に、一定の先端設備等とともに導入された「事業用家屋」が入りました。家屋が対象になりうることは、まだまだ知られていないようですので、新規投資の場合は積極的に使いたいですね。

3.所得拡大促進税制の25%控除(10%上乗せ)

 今後使い勝手が更に良くなる斯税制ですが、25%控除(控除額を10%上乗せ)はあまり使われていないようですので、その使い方を解説しました。

「今さら人に聞けない!決算書の読み方」のセミナーを行いました。


HPのシステムの関係で 、HPの更新が遅くなりました。

2月16日(火)のB-GROOWさんで、掲題のセミナーを行いました。この内容で初めてのWEBセミナーですが、参加者の方が熱心に聞いてくださいました。

なお、遠方ですが、新しく弊社のお客様になる予定の会社の社長も、(本業はキッチリされているのですが、本人曰く)経理のことは何を聞いて良いかが判らない、と言われていました。そういう方にも、この「決算書の読み方」は、例えば「借入を返済してお金が手元に残っていないのに、なぜ法人税を支払う必要があるのか」等を判りやすく説明しますので、参考にして頂けると思っています。

税込経理と税抜経理の違いは?(税額の観点から)

 少し難解ですが・・・。 棚卸資産のある会社の場合、「税込経理の方が利益が多く計上」されています。

 以下、創業1期目のケースで説明します。(なお、創業1年目には消費税の免税措置等がありますが、判りやすくするために1期目から消費税の課税事業者ということで説明します)

ケース1:税込経理の場合(1期目)

  売上高1100(税込み)、 仕入880(税込み)、棚卸資産330(税込み)

 ⇒利益は1100-880+330(棚卸の分を加算します)-20(注1)=530 ①

(注1)売上に係る消費税100-仕入れに係る消費税80=20を消費税として国に納付します。その分は税込経理の場合は、会社の経費(損金)にできます。

ケース2:税抜経理の場合(1期目)

 売上高1000(税抜き)、仕入800(税抜き)、棚卸資産300(税抜き)

 ⇒利益は1000-800+300(棚卸の分を加算します)=500 ②

(注2)税抜経理の場合は、消費税は損益の外(関係のないところ)で計算します。国に納付する消費税は20で税込経理の場合と同額です。

今、税込経理をしていて利益の出ている会社は、税抜経理に変更するのも一法ですね(変更した年度に上記①-②の30を経費にできます)。

 また、償却資産税の計算も、税抜経理の方が有利になります。

例えば機械を税込み1,100万円で買った場合は、税込経理の場合は1100万円を基に償却資産税が計算されますが、税抜経理の場合は、1000万円を基に計算されるため、約10%償却資産税が安くなります。  消費税が10%になると結構差が出ますね。

家賃支援給付金 1)新型コロナの影響ではない売上減の場合は・・・ 2)申請する場合は、福岡県、東京都の上乗せ申請も忘れずに

新型コロナウイルス対策で7月15日から申請の始まった家賃支援給付金。

1)「家賃支援給付金申請要領 中小法人等向け 原則(基本編)」の10ページには、「売上の減少が、新型コロナウイルス感染症の影響によるものではないことが明らか」な場合は、申請ができない旨が記載されています。この文言は、持続化給付金には無かったものです。

売上が単月で前年比50%以上減少(又は連続する3カ月で30%以上減少)しても、新型コロナの影響ではないことが明らかな場合は、申請できませんので、念のため。

2)申請できる方は、福岡県は法人最大60万円の「福岡県家賃軽減支援金」、東京都は「東京都家賃等支援給付金」の上乗せがありますので、これも忘れずに申請しましょう。


「貸方」「借方」の意味、由来、語源、理由

 経理をしていて、まずつまずくのが、「貸方(かしかた)」、「借方(かりかた)」という言い方ではないでしょうか。 「貸方」、「借方」の意味、由来、語源、理由は、諸説がありますが、以下の解釈が最も古いと思われます。

「フィレンツェのある銀行家によってなされた1211年の日付をもつ勘定記録」というものがあります。これには、銀行がA氏に対して「貸付」を行った記録が、(A氏は返済義務を負うため)「われわれに対して与えなければならない(no die dare = is due to give us)」と表現され、複式簿記の左側を呼称する「借方(dare)」に発展したとされています。  但し、この勘定記録には「貸方」の原型を見出すことはできません。

 次に、フィレンツェ地方で商人記録として最も古いとされる「リニエリ・フィニーの元帳」は1296年から1305年にかけてシャンパーニュの大市でおこなったフィニー商会の長男リニエリによって記録された金銭貸借記録および商品売買取引です。  リニエリが行った「貸付」の結果、債権が生じた場合は「de dare(与えなければならない)」などの言葉が冒頭に記載されて記録が始まります。「与えなければならない=返済しなければならない」すなわち「借りている人=借方」となります。また、受け取るべき利息が生じた場合は「de avere(持つべき)」という言葉から記録がはじめられており、つまり「受け取らなければならない=貸している人=貸方」となります。  うーん、判りにくいのですが、要は、「証拠」として、自分が「貸している」場合は、「借りている人=借方」と「見出し」をつけて「記録」したということのようです。

 ここで問題なのは、現在においても引き続き、「自分が貸している(貸付金)」のに貸借対照表の左側で「借方」と表現していることです。反対に「自分が借りている(借入金)」場合は右側で「貸方」となります。右か左かを識別するのに、「自分から」見て「反対側の言い方」をしているため、識別の意味がなく、逆に混乱を招いてしまっています。また、貸方、借方ともに「か」から始まることが更に識別しにくくしています。

 と言う訳で、貸方、借方の由来や理由は別にして、こういう言い方はやめるべきだと思います。因みに、簿記の学校では「貸方、借方は意味がありません。単に右、左の意味だけです」と説明しているところもあるようです。だったら、いっそ「右側」、「左側」と言った方が判り易いと思います。

(参考文献) 「会社記録の基礎 ㈱中央経済社 工藤栄一郎著」 「中世イタリア複式簿記生成史 ㈱白桃書房 橋本寿哉著」 「歴史から学ぶ会計 同文舘出版㈱ 渡邉泉著」

新型コロナウイルス対策で使える「固定資産税の軽減措置」「特例措置」

新型コロナウイルス対策で、売上が減少した場合には、雇用調整助成金に加えて、「絶対に活用すべきもの」は、 1)持続化給付金(加えて6月中の申請ですが、福岡県の方は、福岡県持続化緊急支援金)、 2)これから申請が開始される家賃支援給付金、 3)福岡市や北九州市の方は家賃支援 です。

今回は、上記を申請している前提で、固定資産税に関する内容を記載します。

1)固定資産税の軽減措置(新型コロナで連続する3カ月の売上が前年比30%以上減少している場合のみ利用可能)

今年の連続する3カ月の売上の減少割合に応じて、「来年」の事業用家屋、償却資産に係る固定資産税が0又は1/2になります(土地は軽減されません)。

⇒税理士等の認定経営革新機関の確認を受けた上で、2021年1月末までに軽減を申請する必要があります。

2) 固定資産税の特例措置(売上が減少していなくても利用可能)

現在ある、新規取得する機械装置、工具、建物附属設備等の固定資産税を3年間0~1/2(市町村によって異なります)にする措置に、事業用家屋と構築物が加わります。

⇒従来同様に設備取得「前」に先端設備等導入計画を提出する必要があります。

⇒事業用家屋の場合は、認定経営革新機関の確認の際に、生産性向上要件(年平均1%以上)を満たす設備等が家屋の内外に設置されることを確認、とあるので、やはり内外の設備には工業会の証明書が必要なのでしょうが、建物が減額になる効果は大きいですね。

→医療機器も対象になりますが、医療法人はこの申請ができません。

新型コロナの関係での国税の「申告・納付期限の延長」→「納税の猶予」申請しました。

新型コロナの関係で、経済産業省HPにもある、国税の「申告・納付期限の延長」→「納税の猶予」の申請をしました。

1)「申告・納付期限の延長」:新型コロナの影響で期限までに申告・納付ができないやむを得ない理由があったので、期限の個別延長をしました(延長後の申告書を提出する際に「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」の旨を付記します)。

2)「納税の猶予」:売上が前年同月比△20%以上の月があったので、お客様(納税者である会社)から納税の猶予の申請書を国税に提出して頂きました。

上記2)の提出「後」に、上記1)の「延長後の申告書を提出」することにより、2)の申請が認められれば1年間延滞税なしに納税の猶予が認められます。

免除ではなく、所詮、猶予ですが、①このお客様は納税する金額が大きかったこと、②1年以内に大きな収入が見込まれること、から積極的にこの制度を利用することにより、資金負担の軽減を企図したものです。

この申請が認められれば、斯かる状況下ですので、効果は大きいと思います。